こともありました。そこで、「市場全体の変化のなかで、この施策はどう位置づけられるのか」「競争優位性はどこにあるのか」といった点を、取締役会で繰り返し問い続けてきました。
また、当社グループはものづくりの会社ですから、開発が計画どおりに進んでいるのか、製造面でつくり負けをしていないか、販売面では成長している顧客としっかり関係を築けているのか、といった現場の実態を把握することも重視してきました。機会があれば、可能な範囲で現場に近い担当者にも直接話を伺い、その声を取締役会での議論に活かしています。
―新たな経営方針では、データセンタ関連事業への集中投資など、今後の成長に向けた方向性が示されています。こうした変革期において、取締役会や社外取締役はどのように関わっていくのか、お聞かせください。
塚本: 今回公表した「ビジョン2030実現に向けた経営方針」(以下、2030経営方針)では、従来の中期経営計画とは異なり、2030年の財務到達水準を示しています。これは、変化の激しい経営環境において、固定的な財務目標の達成を目指す従来の中期経営計画では十分に対応しきれず、より柔軟な経営の枠組みが求められると考えたからです。
あわせて、2026年度から2030年度までの5年間で6,500億円の投資を計画し、そのうちデータセンタ関連事業を中心とした成長分野への投資に5,000億円をあてる方針を出しました。私は、この方向性は妥当だと考えています。データセンタ市場はなお成長途上にあり、需要も着実に拡大しています。特にデータセンタ向けの放熱・冷却製品は、当社グループがフロントランナーの一角として高い競争力を有しており、現時点で過剰投資を懸念する状況にはないと見ています。
ただし、この先5年の事業環境を正確に見通すことは非常に困難です。だからこそ、一度決めた方針や戦略に固執するのではなく、投資を加速するのか、軌道修正するのかといった点も含め、変化に応じて機動的に判断していくことが重要です。
塩見: 2030年に向けて、今は成長に向けた取組みを力強く前に進めるべき段階だと思います。一方で、塚本取締役がおっしゃったように、これから5年間にどのような変化が起きるかを正確に予測することはできません。だからこそ重要なのは、戦略の前提が成立しているかを継続的に検証し、計画との差異やその要因を見極めながら、必要に応じて機動的に軌道修正していくことです。社外取締役としては、そのプロセスを継続的にモニタリングしていくことが重要だと考えています。
籔: 2030経営方針のポイントは、単なる投資拡大にとどまらず、ビジネスモデルそのものを転換しようとしている点です。当社グループは今、大きな変革期にあります。
今後、データセンタ市場を成長機会とするなかでは、従来のような単一製品ではなく、当社グループが保有する多様な技術・製品を組み合わせたソリューション提供が競争力となります。また、データセンタ関連の主要顧客は米国のハイパースケーラーや半導体メーカーであり、従来の日系メーカー中心のビジネスとは異なる対応が必要です。求められるスピードや水準も大きく変わるため、組織体制の整備だけでなく、経営陣はもちろん従業員一人ひとりのマインドチェンジも欠かせません。
加えて、6,500億円という大規模な設備投資は、成長に向けた大きな機会であると同時に、品質やコンプライアンスなどの新たなリスクの顕在化も伴います。成長の陰に潜むリスクにも目を配りながら、変化の兆しを継続的にモニタリングしていきたいと考えています。
―監査等委員会設置会社への移行といった機関設計の変更に加え、大幅な組織再編やCXO制の導入など執行体制の見直しも進め、25中計から継続してガバナンス改革に取り組んでいます。
塩見: ガバナンス改革は着実に進んでいますが、重要なのは制度を整えることだけではなく、それを実効的に機能させることです。
監査等委員会設置会社への移行にあたっては、それまで6名体制だった監査役が監査等委員3名となるなか、監査の質をどのように維持していくかが大きなテーマでした。従来、監査役が担っていた役割を監査部へどのように引き継ぎ、実効性を高めていくか、監査等委員会で繰り返し議
▍社外取締役 籔 ゆき子