―25中計では、財務目標を達成し、サステナビリティ目標もおおむね達成しました。これらの成果をどのように評価していますか。
塚本: 25中計では、事業ポートフォリオの変革や、ガバナンス面では機関設計の見直しなど、経営として打つべき手を一つひとつ講じてきました。そうした着実な取組みの積み重ねがあったからこそ、2025年度下期、特に第4四半期にその成果が業績として表れ、掲げた目標の達成につながったというのが私の実感です。一見、事業環境の追い風を受け、ラストスパートで一気に目標を達成したように映るかもしれませんが、私は「雌伏(しふく)」の期間、言い換えれば成果に至る前の助走や仕込みの時間こそ評価すべきだと考えています。
たとえば、事業ポートフォリオの見直しでは、低採算品から高付加価値製品へのシフトを地道に進めてきました。あわせて生産性の向上や販売価格の適正化にも取り組み、着実に前進してきました。
籔: 私も、この成果は一朝一夕に生まれたものではなく、そこに至るまでの地道な取組みが重要だったという点で、塚本取締役と同じ認識です。そのうえで、これは経営を担う執行の皆さんはもちろんのこと、現場の従業員の皆さんが日々努力を重ね、改革を推し進めてきたことによるところも大きかったと思います。
非財務面では、数字だけ見れば女性管理職比率は目標未達となりましたが、執行役員やシニア・フェローをはじめ、責任あるポジションで活躍する女性は確実に増えています。継続課題ではありますが、私は着実な前進があったと受け止めています。
塩見: 25中計を振り返ると、非常に良い着地ができたと感じています。取締役会では、ビジョン2030を見据えたバックキャストの視点に立ち、「2025年をどのような形で終え、次につなげるか」を常に意識して議論してきました。
今後の成長に向けては、特に「攻め」と「守り」のバランスが重要です。私は監査等委員として、大きく攻める局面ほど、守りが手薄にならないよう注視しています。機関設計の変更やCXO制の導入などガバナンス体制の強化も大きく前進しましたが、こうした取組みはまだ走り始めたばかりです。攻めと守りの両面をバランスよく進めていくことが、持続的な成長には欠かせません。
▍社外取締役(監査等委員) 塩見 崇夫
―社外取締役の役割として、経営の監督・モニタリングではどのような視点を重視されていますか。
塚本: 私が重視してきたのは、「リスクをどこまで適切に認識し、意思決定に織り込めているか」という点です。取締役会では、私自身の経験も踏まえながら、さまざまな角度から、特にリスクの観点で問題提起をしてきました。
企業が成長するためには、適切な「リスクテイク」が不可欠です。一方で、品質問題やコンプライアンス違反、サイバーセキュリティ攻撃など、企業価値を毀損しかねないリスクについては、徹底した「リスクミティゲーション(risk mitigation)」が求められます。取締役会は、両者を明確に切り分け、それぞれに応じた判断を行うことが重要です。
取締役会に上程される議案では、個別案件に関するリスクや対応策は丁寧に整理されています。しかし、その案件が成立する前提となっている市場環境や競争状況、技術動向が変化した場合のリスクについては、十分に織り込みきれていないと感じるケースもあります。社外取締役として、そうしたリスクを捉え、問題提起していくことが、より多面的な経営判断や積極的なリスクテイクにつながると考えています。
籔: 当社のモニタリングの特徴は、異なるバックグラウンドを持つ社外取締役が、それぞれの視点から率直に意見を交わし、多面的に経営を監督している点にあると思います。そうした議論の積み重ねが、モニタリングの実効性にもつながっていると感じています。
また、取締役会とは別に意見交換会という場が設けられ、テーマごとにより踏み込んだ議論ができるようになっています。加えて、取締役会の実効性評価では、取締役会議長との対話を通じて、「社外取締役として何を、どのように監督していくべきか」という点についても意見を交わしています。こうした取組みを通じて、当社のモニタリングは形式的なチェックにとどまらず、実効性を伴って機能しています。
塩見: 私自身は、外部環境の変化を踏まえた視点を意識してきました。着任当初は、市場や競争環境の変化と、当社グループの取組みとの関係性が十分に整理されていないと感じる